現像

君とのことは、忘れずにいたいよ。


心に留めておくなんてなまやさしいものじゃなくて


もっと激しく、焼きつけるようにして残しておきたい。


くるくるとフィルムを巻いて、静かに現像液に浸すような


強すぎる光に当たらないように


そっと暗いところで


僕だけが触れていればいい


薬品の匂いが鼻をつくことすら


愛おしく思えるほどに


おかしいほど君との思い出を愛したい


君じゃなくて



大切なのは二人でいた事実じゃなくて


二人でいた思い出だけだよって


そう言えるほど最低でいたい



美味しいかい、それ


あたたかいかい



僕だけが一人、話しかけている午後


返事も帰ってこない携帯ごと、鳥のいる川に流せたらいいのにね



最低だ、僕は


君も



目の前にいる君じゃなくて、君との過去だけを愛しているような。


そんな錯覚にとらわれている



君もでしょ


僕のことはもう、綺麗な過去だよね